近年、一定規模以上の建築物や特定の工作物の解体・改修工事は、アスベスト含有の有無の事前調査の結果等を電子システムで報告することが義務となりました。そのため、アスベスト調査の需要が増えてきているのが現状となっています。今回は、そんなアスベストとロックウールの見分け方や安全性などについて、詳しく解説します。
ロックウールとは?
最初に、ロックウールについて、解説します。ロックウールとは、玄武岩などの岩石や高炉スラグを原料とする人造の鉱物繊維です。ちなみに高炉スラグというのは、原料は鉄を生産する際に出てくるものです。
ロックウールを加工する際には、それらを1,500〜1,600°Cの高温で溶かした後に、強い遠心力で吹き飛ばすことで繊維状に加工していきます。
こちらのロックウールは、よくアスベストと同様の性質と勘違いされる場合が多いのですが、アスベストと比べて発がん性は非常に低くなっています。そのため、安心して利用できるというのが特徴です。
省エネ効果も抜群
ロックウールは、CO2削減にも貢献しているという一面があります。上記でも説明したロックウールの原料でもある高炉スラグは、製造エネルギーが約1/2となっているため、環境にやさしく、省エネ効果も抜群です。
建物をつよく守る
ロックウールは、建築資材の中でもトップクラスの耐火性能を持つ素材として知られており、多くのショッピングセンターや工場で使用されています。それだけでなく、吸音性能も高く細い繊維が絡み合って作られた空間で、入射した空気の振動である音波を繊維の振動に変えてくれます。
そのため、振動が熱エネルギーに変わり、音を吸収して消音してくれるのです。それ以外にも湿気に強かったり、断熱性が高いといった多くの効果が発揮できるため、建物を建てる際にはとても役立つ素材といえるでしょう。
アスベストとは?
次にアスベストについて説明します。ロックウールに比べて、アスベストという名前は一般的に知られているため、聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。アスベストとは天然の鉱物繊維であり、石綿などと呼ばれる場合も多いです。
アスベストは細い繊維で、熱・摩擦・酸・アルカリなどに強く、丈夫で変化しにくいという特徴があります。そのため、建材やシール断熱材などいったさまざまな工業製品に使用されてきたのです。
しかし、そんなアスベストからは人体への影響が確認されるようになりました。下記では、そんな健康被害について、解説します。
アスベストによる健康被害
アスベストは飛散してから、人体に吸入されると、肺に沈着してしまいます。そうなってしまうと、アスベストの丈夫で変化しにくいという性質上、肺に長く滞留してしまうのです。この肺の中にあるアスベストが原因で、肺がんや悪性中皮腫になってしまう恐れがあります。
アスベストが原因で発症する肺がんや悪性中皮腫は、何十年という長い潜伏期間をかけてから発症するため、過去にアスベストを取り扱っていた工場や建設現場で従事していた方は、今後の健康被害に注意する必要があるということを覚えておきましょう。
アスベストの性質
アスベストは、耐熱性・耐薬品性・電気絶縁性などに優れた性質があります。そのため、これまでに建設資材や電気製品などに幅広く使用されてきました。しかし、上記で説明した健康被害の恐れにより、現在では、原則、製造や使用が禁止されています。
ロックウールとアスベストの違いや見分け方
最後に、ロックウールとアスベストの違いや見分け方について解説します。まず、アスベストは製造や使用が禁止されているのに対して、ロックウールは安全性が認められているため、使用できるという点が挙げられます。
その理由として、ロックウールはアスベストよりも繊維が太く、肺まで繊維が到達しないため、発がん性に分類できないと国際がん研究機関が発表しているからです。下記では、ロックウールとアスベストの見分け方についていくつか解説します。
触って見分ける
指でそれぞれをこすって見分けるというのも1つの方法です。ロックウールを指で触っているとくだけてしまうのに対して、アスベストの場合こすってもくだけないという特徴があります。
X線回折法による見分け方
X線回折法というのは、X線を当てて、X線がどう動くのかを調べる方法です。こちらのX線回折法を使用することでもロックウールとアスベストを見分けることが可能となります。ロックウールは非晶質のため、X線を当てていても回折の現象はありません。
それに対して、アスベストは結晶質であるため、X線を当てると回折ピークが発生する現象が起こります。こちらのX線回折法は、実際に工業的な手法で見分けたい際に、使用することが多いのも特徴です。
まとめ
今回は、ロックウールとアスベストの見分け方や、その素材の違いと安全性を中心に解説しました。上記でも述べているとおり、アスベストは現在、人体への健康被害により、使用は禁止されています。
そのため、皆さんもアスベスト調査を依頼する際には、ロックウールとアスベストの違いなどを、ぜひ知っておいて、健康被害のリスクなどを十分理解しておきましょう。
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引用元:https://sunteqnos.co.jp/- 20年を超える実績
- 事前調査から分析まで一貫して対応
- 「特定建築物石綿含有建材調査者」ほか多数の資格を保有