アスベストは、高い耐熱性、絶縁性、耐薬品性をもつことから、建築物や工業製品などに使用されてきました。しかし、アスベストの健康被害が注目されるようになり、今では法律で使用することが禁じられています。アスベスト法の改正は令和3年から施行されていますが、毎年段階的に規制が進められています。令和3年から5年の間に規制内容が変わった部分もあり、現在の内容についてわからないという方も多いでしょう。そこで、今回は、アスベストの法改正について詳しく解説します。ぜひ参考にしてください。
アスベストとは?
アスベストは、地中から採取される天然の鉱物繊維であり、非常に細く柔軟性がある素材です。
アスベストはクリソタイル(白石綿)、アモサイト(茶石綿)、クロシドライト(青石綿)など複数の種類があり、性質や用途は種類によって異なりますが、織物のように加工できる特性をもっています。
また、高い耐熱性、絶縁性、耐薬品性をもつことから、建築や工業製品で広く使用されてきました。
1960年代から1980年代にかけて、建物の断熱材、耐火材、防音材、保温材などの原料として多用されてきました。具体的には、スレート材や断熱材、壁材、床材などの建設資材として使用され、耐熱性や絶縁性が求められるブレーキやクラッチ、電気機器にも多く用いられました。
しかし、アスベストの繊維は非常に細かく、吸い込んでしまうと肺に留まって肺がん、悪性中皮腫、石綿肺などの病気を引き起こすことが確認されています。潜伏期間が非常に長く、アスベスト吸引から数十年後に発症することも多いため、症状が現れる頃には治療がむずかしいケースが少なくありません。
日本ではアスベストの危険性が明らかになると段階的に規制が進み、現在では使用できません。しかし、規制が始まる前に施工された建物にはアスベストが含まれていることがあり、建物の解体や改修時に除去作業が必要になります。
アスベストの法改正の内容
アスベスト法とは、アスベストの含有製品の製造や輸入、使用などを禁止したり、建築物への使用を制限したりする法律のことです。
しかし、規制前に建てられた建築物にはアスベストが含まれていることも少なくありません。そこで、アスベスト法において建築物の解体や改修の際は、事前調査を実施するよう義務化されています。
アスベストの事前調査については、段階的に規制が進められており、令和3年から少しずつ内容が変更されています。
では、アスベスト法の改正内容について詳しく見ていきましょう。
令和3年4月1日施行の法改正
令和3年4月1日施行のアスベスト法の改正では、除去工事に関する安全対策が強化されました。
アスベスト除去工事において、事前調査の結果を正確に記録し、作業が完了した後も検証できるように3年間の保存が義務付けられました。これにより、元請け業者は作業履歴の保管と正確な情報の記録が求められ、工事の透明性が確保されるようになりました。
また、アスベストの取り残しを防ぐため、除去作業終了後には下請け業者が発注者に対して作業結果を報告することも法律で義務化されました。適切に作業が実施できているかを確認するため、アスベストに関する知識をもっている者が作業終了時に確認を行い、その結果を記録し保存することも義務化されています。
さらに、従来の元請け業者に加え、下請け業者もアスベスト除去における作業基準の遵守義務が課されました。
そのほか、吹付けアスベストの除去作業(危険度が高いレベル1作業)において、適切な隔離対策を怠ると罰が科されるようになったり、もっとも危険度が低いとされていたレベル3の建材も規制対象に加えらたりと、法改正が進められました。
このように、令和3年4月1日施行の改正では、元請けおよび下請け業者の義務が拡大され、アスベスト除去作業の安全基準が厳格化されたことが大きな変更点といえるでしょう。
令和4年4月1日施行の法改正
令和4年4月1日施行のアスベスト法改正により、事前調査および報告が義務化され、工事の際に安全性を確保するための対策が強化されました。
建築物の解体や改造・補修工事において、アスベストが含まれる建材が使用されているかの調査を行い、その結果を行政に報告することが定められました。
なお、事前調査報告の義務となるのは「解体部分の床面積の合計が80㎡以上の建築物の解体工事」「請負金額が税込100万円以上の建築物の改修工事」「請負金額が税込100万円以上の特定の工作物の解体または改修工事」「総トン数が20トン以上の船舶(鋼製のものに限る)の解体又は改修工事」を行う場合です。
報告は、紙媒体でも可能ですが、電子申請システム「石綿事前調査結果報告システム(Gビズ)」を通じて行うことが推奨されています。石綿事前調査結果報告システム(Gビズ)を使うと窓口に行く必要がないうえに、システムを通じてテンプレート作成や複数の工事の一括報告が可能です。
紙媒体での報告も認められていますが、基本的には、石綿事前調査結果報告システム(Gビズ)を使って申請するのがおすすめです。工事が行われる自治体に直接提出することができます。
また、事前調査の報告を怠ったり、虚偽の報告を行った場合、30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。工事関係者はアスベストに関する安全対策を徹底し、周囲への健康被害を防ぐための管理を強化するようにしましょう。
令和5年10月1日施行の法改正
令和5年10月1日より施行されたアスベストに関する法改正では、アスベスト事前調査やサンプルの採取が特定の資格を有する専門家のみで実施するよう義務化されました。
これまで、事前調査や報告は義務化されていましたが、だれが実施するのかはルール化されておらず、調査に関する正しい知識をもっている作業員が担当しているのかわからない状況でした。そこで、調査の信頼性を向上させるために、特定の資格を保有している者のみが調査を実施できるようになったのです。
なお、事前調査を実施可能な資格は「石綿作業主任者」「石綿取扱作業従事者」「石綿含有建材調査者」「日本アスベスト調査診断協会に登録されている者」の4つです。
石綿作業主任者はアスベスト除去作業の計画や現場指揮を行える資格で、労働局長が認可した教育機関での10時間程度の技能講習を修了し、18歳以上であれば取得可能です。
石綿取扱作業従事者は、アスベスト関連作業に必須の資格で、18歳以上であれば講習を受講して取得できます。アスベストを含む建材の運搬や解体作業の現場で必要とされる資格で、労働安全衛生法にもとづく義務資格です。
さらに、2023年10月1日より、建築物の解体・改修工事前のアスベスト事前調査を行うには、石綿含有建材調査者の資格をもっている人が作業するよう義務化されています。そのほか、2023年9月30日までに日本アスベスト調査診断協会に登録済みであれば、施行日以降もアスベスト事前調査が可能です。
アスベストの事前調査が必要ないケースもある
アスベストは2006年から建材への使用が禁止されているため、2006年以降に建てられた建築物・構造物には事前調査が不要です。
また、工事対象の建材にアスベストが使用されていないことがわかっている塗装や建材を取り付けるだけなど、アスベストが飛散するリスクのない作業を行うといった場合も、事前調査は必要ありません。
まとめ
今回は、アスベスト法の改正について解説しました。アスベストは適切に取り扱わなければ、健康被害をおよぼす危険があり、法律によって規制が強化されています。法改正は段階的に進められており、内容が複雑ですが、建築物の解体や改修を行うときは法律に違反することのないように内容をしっかりと理解しておきましょう。
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