アスベストは、かつて建築資材として広く使用されていた素材です。しかし、その深刻な健康被害が明らかになった現在では、使用や飛散防止の対策が厳しく求められています。本記事では、建物の種類や契約形態に応じたアスベスト調査費用の負担のルールや注意点、さらには費用を抑えるための方法について詳しく解説していきます。
所有者・借主・行政などケース別の費用負担ルールとは？
アスベスト調査費用の負担者は、原則として建物の所有者とされています。これは、建物の維持管理や解体・改修に関する責任が所有者にあるとされているためです。解体工事や大規模な改修工事を行う際には、建材にアスベストが含まれているかどうかを調べる事前調査が義務化されています。さらに、2022年4月からはその結果を自治体へ報告することも義務となりました。
所有者が費用を負担するケース
建物の所有者が費用を負担するケースとしてはおもに3つあります。一戸建て住宅を解体する場合、マンションの管理組合が共用部分を改修する場合、所有している商業ビルの外装を修繕する場合です。これらは、基本的に所有者がアスベスト調査費用を負担します。
事業主が費用を負担するケース
一方で、事業用建物においては労働安全衛生法に基づき、労働者の安全を確保する責任がある事業主が費用を負担するケースもあります。たとえば、賃貸ビルの一室をオフィスとして借りている企業が内装改修工事を行う場合、アスベスト調査費用はその企業側（借主）が負担することが多いです。
行政が費用を負担するケース
学校や公民館などの公共施設においては、その管理者である自治体や国が費用を負担することが一般的です。特に老朽化が進んだ建物ではアスベスト含有のリスクが高く、行政主導での調査・除去が進められています。
賃貸物件・事業用建物での注意点とトラブル回避のポイント
賃貸物件や事業用の建物では、アスベスト調査費用をめぐってトラブルが発生しやすい傾向にあります。その理由は、所有者と使用者（借主）との間で費用負担の線引きがあいまいになることが多いためです。ここでは、賃貸物件・事業用建物での注意点とトラブル回避のポイントを紹介します。
契約内容を確認するのが最重要
賃貸契約書には「改修や工事に伴う調査・申請費用は借主の負担とする」といった特約が含まれていることがあります。この場合、借主が自らアスベスト調査を依頼して費用を支払わなければなりません。とくに、テナントが入居中に自社の内装を改修する場合や店舗や事務所のオーナーが借りている物件で独自に工事を行うときは、借主側が主体となって建物の一部を改造・変更する場合などでは借主が費用を負担する可能性が高くなります。一方で、共用部分の改修や外壁の補修といった建物全体に関わる工事については、所有者側の負担が一般的です。
民法第717条との関係性にも注意
また、民法第717条では土地の工作物等の占有者および所有者の責任が規定されています。そのため、アスベストによって第三者（通行人や隣人など）に健康被害が及んだ場合には、借主であっても責任を問われる可能性があります。こうしたリスクを回避するためには「契約書にアスベスト調査費用の負担区分を明記してもらう」「改修計画がある場合は事前に貸主へ相談して責任範囲を確認する」「必要に応じて弁護士や建築士などの専門家に確認してもらう」などの対策が有効です。
調査費用を安く抑える！補助金制度と業者選びのコツ
アスベスト調査の費用は、建物の規模やアスベストの使用状況によって大きく異なります。たとえば、レベル1（吹き付け材など高リスク）に分類される調査では調査の専門性も高くなり、30万円以上の費用がかかることも珍しくありません。ここでは、調査費用を安く抑えるポイントについて紹介します。
補助金制度を活用する
アスベストの調査費用負担を軽減するために、国や地方自治体ではアスベスト関連の補助金制度を設けています。内容は自治体によって異なりますが、上限25万円としたアスベスト調査費用の一部を補助することや除去作業に対する補助金の支給、調査結果の報告義務に伴う費用の一部補助などがあります。補助を受けるには、自治体に事前申請が必要な場合が多いです。地域によっては申請件数が多いと早期に締め切られることもあるため、情報収集と早めの対応が重要です。
業者選びのポイント
費用を抑えるもう1つの重要なポイントは、信頼できる業者を選ぶことです。アスベスト調査には有資格者が必要であるため、国や自治体の認可を受けているかや調査範囲、分析項目、報告書の有無などの見積もり内容が明確か、近隣対応・報告義務への理解があるかなどを確認しておきましょう。また、現場近くの業者を選ぶことで、出張費などの追加費用を抑えられます。ほかにも、複数の業者から見積もりを取る相見積もりを行うことで費用の相場を知り、不当な価格を回避することができるでしょう。
まとめ
アスベスト調査にかかる費用は、建物の種類や契約内容により負担者が異なるので、適切な理解がないとトラブルを招く恐れがあります。所有者や借主、行政それぞれのケースでのルールを正しく把握し、契約書の確認や事前相談を怠らないことが重要です。また、補助金制度の活用や信頼できる業者の選定により、費用を抑えることも可能です。安全性とコストの両面から、計画的な対応を心がけましょう。
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